「あー、よく寝たかもしれない」

四時間目の授業が終わって、昼休み。
つまらない数学の時間だった。
興味がまったく沸かないと、退屈になってそのうち眠くなるのは誰でもそうだと思う。
私はいつのまにか寝ていた。教科書が顔の下にあったので、たぶん顔に紙の跡がついてるかも。


「あ、起きたみたいだよ」
「名前が寝るなんて珍しいよね」

不意にそんな声が聞こえて前方を見ると、遊戯と杏子が手を振った。
周りにはいつもの面子が集まっていて、各々椅子に腰掛けていた。

「お昼一緒に食べようよー」

獏良くんがいつもの天然オーラ全開でそんなことを言ってきた。
私はうん、と頷いて、机の横の鞄からお弁当と
朝、近くのコンビニで買ったデザートのシュークリームを取り出して、みんなのところに向かった。

「あれ、みんな、お昼ごはんは?」
誘ってくれた獏良くんの前には購買部で買ったらしいサンドイッチがあるけど、他のみんなにはなかった。

「もうとっくに食っちまったよ」
「食べてないの、名前さんと獏良君だけだよ」

城之内と御伽が私の疑問に答えた。
教室の時計を見ると、お昼休みが始まってからだいぶ時間が経っていた。

「そうなんだ……。でもなんで獏良くんはお昼まだなの?」
「購買部が混んでて、なかなか買えなかったんだ」

獏良くんがそう言って苦笑した。
獏良くん、優しい性格だからなあ……。

「じゃあ食べよっか。獏良くん」
「うん」


お弁当を広げて、私はまず卵焼きを食べた。
おいしい。今日はいいかんじにできた。
心の中で一人嬉しく思っていると、獏良くんが声をかけてきた。

「名前さん」
「ん、何? 獏良くん」

「そのシュークリーム……」

私は机の端に置いたシュークリームを見た。

「もしかして、ノンテールのシュークリームかな?」
「うん、そうだけど」

おいしいよね、と言ったら、獏良くんは頷いてくれた。

「僕、ノンテールのシュークリームが一番美味しいと思うんだ」
「クリームたっぷりだもんね!」
「うん。それに、甘さもちょうどいいし……」



お弁当を食べながら、私と獏良くんはシュークリームについて語り合った。
そんなある日の昼休み。